高尿酸血症・痛風

痛風とは

痛風は、1960年以前には、日本では稀な疾患でしたが、その後、急増しています(食生活の欧米化などが原因として挙げられます)。
現在では、患者数は30~60万人と推定されています。 それに対し、日本痛風・核酸代謝学会によって、「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」が2002年作成されました。

痛風とは血液中にさまざまな原因で尿酸が増えすぎ、体のあちこちに尿酸の結晶(尿酸塩)がたまり、関節に痛みを引き起こしたものです。
その名のとおり、風に当たっても痛むというほどの激しい発作です。
尿酸値が高いだけで、ほかに症状がない場合は、高尿酸血症と呼ばれますが、これは、痛風の予備軍です。40歳以上の男性の10人に1人が予備軍といわれます。
男性・女性とも、尿酸値が7.0mg/dLを超えると、高尿酸血症と診断されます。
尿酸値は6mg/dL以下がよいとされていますので、ご注意を!

痛風発作がなくても、尿酸値8mg/dL以上で合併症があれば、薬物治療を行います。
最近、血清尿酸値の上昇は心血管疾患の危険因子であると考えられています。尿酸値が高い場合は放置せず、医師に相談してください。
尿酸の産生は全体の8/7が体の中で合成され、残り1/7が食事から摂取。排泄は、尿や便からです。産生過剰や排泄低下が、尿酸値を高くします。

治療

症状がないからといって、尿酸値を高いままにしておくと、合併症を引き起こします。治療は、薬物療法を基本とし、食事療法、運動療法を行ないます。

治療の基本は薬物療法

痛風の治療は薬物療法を基本に、食事療法や運動療法が行われます。薬には、尿酸の合成を抑える薬と、尿酸の排泄を促す薬があります。
痛みが取れたからといって自分の判断で中止するのは禁物。
再発を防止するためにも、治療は生涯続ける必要があります。

痛風に激しい運動は逆効果

痛風の治療に運動は必要ですが、激しい運動は禁物。水分が失われて、痛風発作を誘発することがあります。 運動前・運動中に十分な水分を補給し、ゆるやかな運動を行ってください。

痛風を放っておくと、どうなる?

尿酸値が高いままにしておくと、痛風発作の再発だけでなく、合併症を引き起こします。
腎臓の働きが悪化したり、尿路結石も起きやすくなります。尿酸が結晶化して石のようになり、尿管にひっかかると、激しい痛みを伴う発作を引き起こします。
痛風と並行して、動脈硬化による心臓病や脳梗塞も起こりやすくなります。
痛風治療は痛みをなくすだけでなく、治療を続けて合併症を防ぐことが大切です。

高尿酸血症・痛風とメタボリックシンドローム

  1. 従来、高尿酸血症は痛風発作の前段階として認識されることが多く、痛風発作の予防、治療に焦点がおかれていました。
    しかしこれからは、生活習慣病として高尿酸血症を第一に考えて診療していくというものです。
  2. 高尿酸血症は長期間無症状のことが多く、過食や肥満、運動不足から生じる典型的な生活習慣病の経過をとります。
    その為高尿酸血症がメタボリックシンドロームの表現形のひとつとして存在する場合が多く、血清尿酸値が内臓脂肪蓄積量を反映する良いマーカーであることが明らかとなってきています。
  3. また、高尿酸血症とインスリン抵抗性の間に相関があることは以前より指摘されており、インスリン抵抗性に高尿酸血症が合併しやすいのは、
    肝臓においては内臓脂肪の蓄積によって尿酸産生が亢進する一方、腎臓においては高インスリン血症によってナトリウム排泄抑制と同時に尿酸排泄低下が起きることによるとされています。
  4. このように、高尿酸血症はそれだけに注目するのではなく、生活習慣病としてメタボリックシンドロームという大きな枠としてとらえることが重要となっています。
    高尿酸血症はメタボリックシンドロームの構成要素の一つであり、最終的には生命予後に関わる心血管疾患のリスクにつながると考えられます。
  5. なぜ痛風や高尿酸血症の患者さんが増えているのでしょうか?
    それは、食生活が豊かになり欧米化したこと、アルコール飲料の消費が増えたことなど環境の変化に加え、ある遺伝因子も係わって発症すると考えられています。
  6. 高尿酸血症では、このように複雑に関係する他の生活習慣病の合併がないかどうかを必ず診る必要があり、それが患者さんの予後を規定する因子となるのです。
  7. 尿酸値の上昇に最も関係が深いのは、脂肪とアルコールの取り過ぎです
    肥満は将来、高血圧や高脂血症、糖尿病などにも関係してきますから、太りすぎの傾向がある痛風・高尿酸血症の患者さんではまず、
    その解消を考える必要があります。食品に関しては、尿酸をつくる元になるプリン体の摂取を減らしたり、アルカリ性食品(海草類や野菜類など)を中心に、バランスのよい食事に心がけましょう。